2024.8.26

大学の一角にある、日本語・韓国語・中国語が入り交じる「あの部屋」とは?

わたし|ワンダー編集部
大学の一角にある、日本語・韓国語・中国語が入り交じる「あの部屋」とは?

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鳥取大学の一角には、日本語と韓国語と中国語が入り混じる小さな部屋がある…そんな噂が編集部に寄せられました。今回は、部屋に出入りしているという、おばらひかりさんとかわしたれいかさんが、「あの部屋」で日々起きていることを紹介してくれました。

 

きっかけは「日式棒棒鶏」

鳥取大学の地域学部棟3階の「あの部屋」で、私たちの異文化交流は行われていた。異文化交流というと少し大げさな気もするが、私たちはその部屋で語学の勉強会を行ったり、昼ご飯を食べたりと、国や年齢の異なる人との会話を楽しんでいた。あの部屋には、主に日本人の学生と台湾人の学生、そして韓国人の学生が集まっていた。時折、ラオス人や中国人なども集まった。私たちは、主に日本語を使っていたが、日本語だけでなく、中国語や韓国語を混ぜながら会話を楽しんだ。

ある日、「棒棒鶏」(バンバンジー)について台湾人の留学生・ふーさんとその部屋で話したことがある。「棒棒鶏」は日本では夏によく食べられる中華料理として有名であるが、ふーさんは「棒棒鶏」を知らなかった。私は、ふーさんに「棒棒鶏」について説明したのだが、全く理解されなかった。というのも、台湾には「棒棒鶏」という料理は存在せず、「棒」という漢字は「よい」という意味で、名前を見ても料理かどうかさえよくわからなかったのである。ふーさんは、「鶏のもも肉を使うなら棒棒腿ではないのか」など私に抗議をし、最終的に私たちの間で「棒棒鶏」は「日式棒棒鶏」と呼ぼうと決まった。
私はこの出来事をきっかけに、言葉の意味を考えたり、日本語にある言葉が中国語や韓国語にはあるのかと考えたりすることによって、相手の言語や文化を知り、自分の世界が広がっていくのを感じるようになった。

 

日本語・韓国語・中国語が入り交じる空間

おばら:今日は芋けんぴを持ってきたよ、みんなで食べましょう。どうですか?美味しいですか?

ふーさん:まあまあ。

おばら:「まあまあ」ってひどい(笑)

ふーさん:「まあまあ」は台湾人の言い方だった!台湾では「まあまあ」は「美味しい」。韓国の場合はなんというの?

ミンソ(韓国からの留学生):美味しくなくても「美味しい」って言う。

スンイ(韓国からの留学生):「私も美味しい」と言います。

ふーさん:でもそんなに気になるものじゃない場合も美味しいと言うの?

ミンソ:まずいと言ったら傷つくから。

おばら:日本人は美味しくないもの食べたら黙りますよ。「美味しくないなあ」と思っていて、「美味しいですか?」と聞かれたら「美味しいです」と言うけど。

かわした:でも友達とかだったら、「うーん」ってなるよな。

安安(台湾からの留学生):友達に「美味しい?」と聞かれたら、「見た目はいいですね」って日本人は言う?

おばら:見た目「は」って言っちゃうと、見た目だけになっちゃうからだめ。

スンイ:韓国では「甘いですね」は美味しくないというイメージ。

叶一郎:甘くなくても甘いって?甘くないもののはずなのに、甘いからまずいってこと?

ミンソ・スンイ:うんうん。

おばら:韓国人は辛いものが好きなんだね!


中国語や韓国語をみんなで勉強しており、1週間でおよそ5つの勉強会が行われていた

スンイ:私は韓国に帰ったら中国語を続けて勉強したい。大学に中国人と台湾人が多いから。大学にゴンジャ塾というのがある。

安安:ゴンチャ?あの、タピオカミルクティーの?

ミンソ:공자, 맹자.

スンイ:偉い人!中国の人!たぶんみんな知ってる。

ふーさん:もしかして、ゴンズー(孔子)?

ミンソ・スンイ:そう!

叶一郎:ああ、孔子か!

安安:タピオカミルクティーじゃなかった!孔子と言えば、ぼくの頭のなかには儒教思想があるかもしれない。親孝行とか。

おばら:日本にも親孝行が大事って考え方あるよね。

安安:日本人は神道教?

叶一郎:仏教と神道かな?

おばら:でも私は神道っていっても正月に参拝するだけだから(笑)。韓国はキリスト教が多いの?

ミンソ:うーん、キリスト教も多いし、仏教もいるかな。

スンイ:朝鮮時代は儒教が多かったです。

安安:台湾は道教と仏教、あと先住民のものもある。

おばら:キリスト教って中国語でなんて言うんですか?

ふーさん:「基督教」と「天主教」。

かわした:プロテスタントとカトリックで違うということだね。

ふーさん:…睡覺(寝るの意、天主教の主教の部分と発音が似ている)。

おばら:ダジャレじゃん(笑)。

 

これを書いている今、大学の前期も終わり、あの部屋に集まっていた人々も離れ離れになってしまった。毎日のように行われていた異文化交流は、私に大きな影響を与えてくれた。みんなそろってあの部屋に集まることも難しくなってしまったが、私たちの世界を広げてくれた経験はかけがえのないものであっただろう。
私がこのテキストを書こうと決めたのは、あの部屋にあった空気を残しておきたいと思ったからだ。
あの部屋を紹介してくださった柳静我先生、そして勉強会をしてくれたふーさん、安安さん、ミンソちゃん、スンイちゃん、ありがとうございました。


もちろん、あの部屋を飛び出して会うこともありました


最後の勉強会にて

 

おばらひかり / Hikari Obara
かごしまから鳥取へ。芋けんぴが好き。台湾留学に向けて中国語を勉強するも、なかなか上達しない鳥大生。文章中の「私」。

かわしたれいか / Reika Kawashita
鳥取県米子市出身。国際地域文化コース東アジアゼミ所属。4か月間の韓国への留学を控え、韓国語の勉強会に参加している。趣味は韓国、中国ドラマをみること。K-POPを聞くこと。旅行に行くこと。

*この記事は、鳥取大学地域学部国際地域文化コース柳ゼミの活動を基にしています。

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