2025.11.12

隼、ライダー、おみくじ…予期せぬ偶然を楽しむゼミ活動とは?

田中 健輔
隼、ライダー、おみくじ…予期せぬ偶然を楽しむゼミ活動とは?

FEATURE特集

鳥取大学地域学部に入学後、なんとなく選んだゼミで「おみくじ制作」という思いがけない活動に出会った田中健輔さん。また、静かな無人駅に全国のライダーが集っている事実に衝撃を受けて、自身の地域を見る目が変わっていきます。偶然を楽しむ田中さんのゼミ活動の記録です。

 

正直言って、私はゼミ活動にそこまで熱意は持っていなかった。鳥取大学の学生になった私。苦しい受験から解放された私は単位のために何となく授業を取り、何となくバイトを始め、部活でやりたかったバンドを始めた。部活には心血注いで楽しみ、それ以外の生活は何となくで過ぎていく。そんな風に大学生活が過ぎ3年生になったころ、なんとなく興味があった馬場芳ゼミに配属された。そんな毎日を送っていた私が、馬場ゼミで「代々作られているおみくじ」に関わることになるとは、その時は全く思っていなかった。正直、ゼミの課外活動なんて、単位が取れるならそれでいいくらいの軽い気持ちだったのだ。

 

馬場ゼミの伝統?おみくじ作り

そんな私が関わることになったのが、ゼミの伝統になりつつある「おみくじ」。現在までに3種作られている。初代は智頭急行の恋山形駅で販売した「恋みくじ」、2代目は鳥取の八上姫の伝説をモチーフにした「八上姫みくじ」、そして3代目が私たちの代で制作した八頭町の隼駅にまつわる「ライダーみくじ」だ。
なぜおみくじなのかというと、初代の先輩方が「智頭を盛り上げたい」という思いから、智頭急行と縁の深い恋山形駅を舞台に考えた結果、「恋といえばおみくじ」という発想に至ったという。その流れを受け継ぎ、先輩方が作ったノウハウを活かしながら、代ごとに特色のあるおみくじを制作するようになったのだ。そのおかげか、後輩たちがゼミ配属の希望を出す際におみくじが印象に残っていると馬場先生に話す学生もいたそうで、少しずつゼミの象徴のようになっているのかもしれない。

 

無人駅に秘められた熱気との出会い

ライダーみくじを作る際に私たちが目を付けた隼駅だが、隼駅がある八頭郡の隣町に20年以上住んでいながら、私はその存在を知らなかった。初めて知った際に抱いた印象は「普段は人も少なく、静かな無人駅」。鳥取では見慣れた、寂しい駅。特に話題になることもない駅だと思っていた。しかし、この駅は毎年夏に「隼駅まつり」というイベントで、全国からライダーが集まることを知り、私は正直衝撃を受けた。名車と呼ばれるスズキのバイク「Hayabusa(隼)」と名前が同じというだけで、これだけ多くの人が集まるなんて。しかもその人数は、軽く2000人を超えており、年々参加者は増加中。ただの無人駅だと思っていた場所に、こんなに熱気が生まれるなんて想像もしていなかった。実際に写真や動画を見てみると、会場いっぱいにバイクが並び、ライダーたちの熱気と笑顔で活気づいている。この情報を知った瞬間、私はまさに目が覚めるような気持ちになった。普段の生活では全く経験できないような衝撃が、突然目の前に現れたのだ。

 

ライダーみくじ誕生と制作の裏側

この衝撃が、私のゼミでのおみくじ制作への意欲を一気に引き上げた。それまでは「なんとなく関わってみる」程度だった活動が、一気に「面白いことをやってみたい」という気持ちに変わった瞬間だ。こうして誕生したのが「ライダーみくじ」だ。
ライダーみくじは、八頭周辺のラッキースポットという名目でおすすめのツーリングスポットを紹介したり、ライディングメッセージやラッキーアイテム、バイクの買い替え時や次の目的地のヒント、さらには交差点での進行方向まで書かれている。小さな紙切れ一枚ではあるが、ライダーたちに向けてちょっとした遊び心と道しるべを提供するものだ。
制作の過程では、どのスポットを載せるか、どんなメッセージにするか、カラーや表現方法はどうするかなど、細かい部分まで何度も考えた。さらに、隼地区にある「隼Lab.」までヒアリングに行った際にアドバイスをいただいたり、自分たちでも現地でのリサーチを重ねたりした。もともと、ライダーをテーマにしながら制作メンバーの中にバイクに詳しい者はおらず、ライダーにウケる文言やデザインを考えるのは簡単ではなかった。
そのため、バイクを所有している友人に相談しながらアイデアを出すなど、試行錯誤を繰り返した。メンバーは私を含め三年生三人と、四年生が一人という小さなチームだったが、その分、遠慮なく意見を出し合いながら一体感を持って作業に取り組めたと思う。実際に作っている間も、どんなライダーが手に取ってくれるのか、どんな反応をしてくれるのかを想像して楽しかったのを覚えている。
この「ライダーみくじ」は当初は隼駅まつりに合わせて設置を目指していたが、残念ながら完成は間に合わず、祭り後に、会場として使われていた竹林公園に設置した。それでもライダーは祭り以外の時期にも隼地区を訪れているようで、少しずつ手に取っていただけているようだ。結果として、すぐに大きな反響があったわけではないが、自分たちが作ったものが確かにライダーの目に触れ、存在していることが嬉しく思えた。

北海道でライダーみくじについて発表する機会もあった

偶然から広がる学びと体験

ライダーみくじの制作・設置が終わった後には初代のおみくじを作った先輩にお話を聞く機会もあった。先輩は、「当時は、こんなに続くなんて思っていなかった。でも形は変わっても、毎年誰かが受け継いでいるのは嬉しい。」と語ってくれた。その言葉を聞いたとき、この伝統があったからこそ、自分は隼駅での衝撃的な体験に出会えたのだと実感できたのである。偶然のような出来事に心から感謝するとともに、これからも馬場ゼミを代表するおみくじが続いていってくれることを願わずにはいられない。

おみくじを作った先輩に話を聞く筆者(左)

思い返せば、私がゼミ活動を通じて得たのは、自分の生活の中では想像もしていなかった世界との出会いだった。何となく始めたことが、想像を超える体験につながる。そんな面白さに、私は何とも言えないアツさを感じたのだ。普段は静かな無人駅に、全国からライダーが集まる現実を知り、そこに自分たちが関わったおみくじが微力ながらも関係していることは、まさに予想外の発見。これからも、この偶然に導かれた経験を大切にしながら、ゼミ活動を楽しんでいきたいと思う。

 

*この記事は、鳥取大学地域学部地域創造コース馬場芳ゼミの活動を基にしています。

田中 健輔 / Kensuke Tanaka

鳥取県鳥取市出身。2022年度入学、地域創造コース所属。音楽が好きで、フォークソング部ではギターボーカルとして活動中。おみくじで凶を引いたことがないので本当にあるのか疑っている。

NEWS & EVENT お知らせ

もっと見る