2024.7.26

大学生が地域で活動するメリットって? 中川玄洋さんインタビュー後編

金子林太郎
大学生が地域で活動するメリットって? 中川玄洋さんインタビュー後編

PEOPLE WONDERあっちにもこっちにも
ワンダーな人たち

学生たちの「やりたい」を伴走型で支援しているNPO法人bankupの代表・中川玄洋さんのインタビュー後編です。前編で、中川さんから「みんなは何がしたいんだろう?」と問われた学生たち。地域に出ることへの不安や地域で活動するとどんなメリットがあるのかなど、率直な思いと疑問を中川さんにぶつけました。

 

やってみたいことがあれば、動いてみる

中川:今、みんなが一番やりたいことは何?

―もっと料理がしたいです。自炊っていうと、自分一人が食べるために料理を作るので面倒くさいんですが、誰かに食べてもらえるって考えたらやる気が出るので、もっと料理を頑張りたいなって。

中川:いいね、いいね!料理は売れるしね!例えば、料理を作って出しました。「こんなマズい飯が食えるか!」って言われたとしても、すごく学ぶと思うんですよ。「めちゃくちゃ美味しいから、もっと値段を上げてもいいよ」って言ってもらえたら身になるし、「こういう食材を知っているから、今度行ってみる?」みたいな話にもなると思うんですね。だから、まずは小さいことでいいから、自分がやってみたいことを一つ見つけて、大学時代にやってみる。やりたいことが「見つからない」「ない」「わからない」ことも当然あると思うし、それでいいと思っていて。「たぶんこれかな」みたいなことで少し動いてみる。想像しているだけではだめなので、行動に移すことは絶対に大事。違うなって思ったらやめたらいい。やめられるのが大学生のいいところなんですよ。だから、厨房に立ってみよう!決定!

——地域に出て活動する意欲のある人はコミュニケーション能力に優れている人が多いと思うのですが、自分の思いを言葉にできない人に対して何かサポートはされていますか?

中川:うちの学生には、話題に困った時には「とりあえずたくさんご飯を食べろ」って言っています。「右のおばあちゃんの握り飯を食ったら、左のおばあちゃんの握り飯も食え」と。本当に食べっぷりがよかったら話は勝手に進む。コミュニケーションが苦手なのは、相手が分からないから何を喋っていいか分からないっていうのが一つと、もう一つはこれ滑るんじゃないかみたいな心配があるじゃないですか。でも、滑って覚えてもらったらチャンス。次に会った時には「お前滑ったやつだな」って会話ができる。コミュニケーション能力があるかないかではなくて、コミュニケーションを取ればいいと思うんです。


bankup所属の学生団体「農村16きっぷ」の活動風景。智頭町での草刈りボランティアの休憩中、集落の人と交流を深めた。

地域に出ることで学べる3つの事

——学生時代に地域活動を行うことで得られることは何でしょうか?

中川:まずは、農作業やまちづくりに具体的に関わることで、専門分野を深く学べること。農学部だと、農作物はこうやって育つとか、農業用水の管理はこうすると楽だとか。地域学部だと、ラジオ体操に来るおばあちゃんたちと朝コーヒー飲みながら話をしていると昔のまちの話が聞けたとか。実際の現場が見られて生の声が聞けるっていうのは、学問的にポイントだと思います。
2つ目は、自分で試行錯誤できるということ。自分で企画して、やってみて、フィードバックをもらえる機会って意外とないんです。例えば、経営マネジメントを学んだとしても、実際にやってみないと分からないことが多い。その経験ができるのは大きいです。
3つ目は、いろいろな働き方の人に出会えること。集落でも兼業農家の人もいれば専業農家の人もいるし、移住者もいる。その人たちがどういう観点で仕事を選び、今の暮らしを選んだか、キャリアの観点からも学びがあります。
この3点を、大学1年~3年の前期くらいまでの2年半で、週末に自分で確認できるというのは学生にとってのメリットだと思うし、大学時代に結構学んだなということになると思います。

インタビューを終えて

私は今回のインタビューから、大学生が備えておくべき考え方や行動の仕方が見えたように思います。学生にできない部分は大人に頼り、できる部分、やりたい部分は最大限に活かす、ここが大切だと感じました。
このインタビュー後、私は中川さんのオフィス内のシェアキッチンを借り、料理を作り、人に提供するという体験を実際にしてみました。さらに中川さんからの紹介で、私が所属する鳥取大学のサックス4重奏グループ「OASOBI quartet」が、鳥取駅前のイベントステージで演奏させてもらう機会もいただきました。それまで演奏の機会は少なかったのですが、一度皆さんの前で演奏をさせていただいてからは依頼をたくさんいただいています。これは中川さんの言う地域に出ていくメリットをまさに体現した出来事だったように思います。
地域に出ることによって、今までなかった経験や人との関係が生まれる。それには一歩踏み出す勇気が確かに必要ですが、それに見合った、いやそれ以上の価値があり、とても素晴らしく楽しいことだと分かりました。
今後は卒論制作に向けて地域の調査に入っていくわけですが、学業の面においても、演奏活動などの娯楽の面においても、積極的に地域に入り、いろいろな人とつながりを作っていきたいと思っています。また、地域に出て人とつながりを持つということは、今後大学を卒業して、社会人になっても必要なことだと今回実感することができました。


中川さんのオフィスがあるマーチングビルで開催した「料理をふるまう会」。中川さんの言う「まずは小さいことでいいからやってみる」を実践した瞬間。


2024年6月、鳥取駅前風紋広場で開催された「鳥取まちなかビアフェスタ」のステージに立つ「OASOBI quartet」。

 

NPO法人bankup
https://www.bankup.jp/

中川玄洋さん
https://www.instagram.com/genyonakagawa/

OASOBI quartet
鳥取大学の学生からなるサックス4重奏グループ。学内外で演奏します。ご希望があれば、b22n5117k@edu.tottori-u.ac.jp(金子)までご連絡ください。まずは相談だけでも大歓迎です。

金子 林太郎/Rintaro Kaneko
長野県長野市出身。鳥取大学地域学部地域創造コース2022年度入学。鳥取大学吹奏楽団W.E.所属。OASOBI quartetとして鳥取市内のイベントで演奏している。大学ではできる限りやりたいと思ったことを無理せず、やれるだけやることをモットーに生活している。

*この記事は、鳥取大学地域学部地域創造コース2年次選択科目「ワークショップ入門」(菰田レエ也先生、2023年度)でのインタビューを基にしています。

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