2024.5.2
人生におけるベストな選択って? 浦林真大さんインタビュー後編
あっちにもこっちにも
ワンダーな人たち
鳥取市でカレー屋さんをされている浦林真大さん(以下、まささん)のインタビュー後編です。前編では、ユニークな営業スタイルや、大学時代に感じた思い、今のまささんの原点となっているインド放浪旅のことなどを伺いました。今回は、まささんの根底にある価値観や今後のビジョンについてのお話しです。
成功が全てじゃない!失敗も後悔も自分にとってのベスト
——これまでの人生でいろいろな経験をしてきた中で、1番良かったことと悪かったことを教えてください。
良かったことは教育学部に進学したことです。特に自分で何をしたいかは見つからなかったけど、大学で教育を学ぶ中で、根本的に何で人は生きるかみたいなことを18歳19歳なりにすごく考えた。根本から考えるみたいなスタンスがそこで付いた気がして、それがカレー屋をはじめるきっかけになったインドの旅でもいきてきた。何となくある正解じゃないけど、大丈夫ラインに空気を読んで乗る癖が付いていたんだけど、それを全部一回無視できるようになった感じですね。
悪かったことはたぶんいっぱいあるんだろうけど、悪かったことを見つけると心が沈むので見つけません。その時その時でベストを尽くしているから、失敗してもいいってことにしましょう。
ーポジティブな考え方ですね!まささんのポジティブさはいろいろな場所に行く中で身に付いてきたんですか?それとも元々ポジティブなんですか?
いや。めっちゃネガティブです…今も(笑)さっき言った「ベストを尽くしている」っていうのは、例えば「ああ、これ、やっておけばよかったな」って思うことも、その前に「やれるけど、やらない」っていう選択を自分でしているわけじゃん。「やらない」っていう選択をしたのには、「やれない」とか「しんどい」とか理由がある。身体やメンタルのことも考えて、トータルでやらない方が良いっていう選択をしたのだから、それが“ベスト”だと思うんです。それで「あれもやらなかった。これもやらなかった」っていうのが積み重なると、「ちょっとやるか」ってなる。そうしたら、そこで選んだ“ベスト”が前より理想的になる。だから、ずっと“ベスト”なんです。
変化しながら、大切なものをつかんでいく
——お~すごい!外国に旅行して自分の中の価値観が変わったことはありますか?
日本ってだいたい何でも整っていると思うんだけど、インドでは普通に窓ガラスが割れたバスが走っているし、整えきれていない状態で物事が進んでいるの。バスは窓ガラスが割れたまま走ってもいいし、これでもいいんだな、そんなに綺麗にまとめなくてもいいんだなって思えるようになったかな。
——それが、とりあえず綺麗な形じゃなくてもいいからやってみようっていう原動力にもなっていますか?
そうですね。自分のお店がオープンしましたって言ってるけど、元々ガラス屋さんだったところで、残っていたものをちょっとずつ処分しているから、お店の前にゴミも置いてある。たぶん来たら「これ、お店?」みたいな感覚があると思うんだけど、それでもとりあえずいいか、徐々に整えていけばいいか、みたいな感じですね。
2023年に元ガラス店を改装してオープンした「せかいのまんなか本部」
——「生きること」「仕事と人生」についてどうお考えですか?どういうスタンスで日々生きているかお聞きしたいです。
今は仕事の比率がちょっと多すぎるかな。実は、先日子どもが生まれて、仕事で自分表現する比率をちょっと下げて、家のこととか、もうちょっと生活に意識を向けて生きていけれるようになりたいなって、今は感じています。これがベストとかはあまりなくて、その時々で大切にしたいことが変わるというか、それに合わせて生きていきたいですね。
——最後に、今後の人生の目標ややりたいことを教えてください!
いつかは“喫茶店みたいなこと”をやりたいなって思っています。“みたいなこと”っていうのは、店という形態になるかわからないので、あえてそう言っています。一人で店をやって終わりっていう感じじゃなくて、他の人にもその店の中で出店するなど、他の人たちと一緒に一つの空間を作るみたいなことをやってみたい。例えば、お客さんとして来た人が「実は私、お菓子を作れるんです」って、気づいたら横でケーキを売っているとか、お店の人とお客さんの境目もなくなればいいなと。いろんな人が来て、いろんなつながりが生まれて、みんなが行きやすい店を作りたいし、近くにいる人たちの生活がちょっとでも円滑になるような場所を作れたらいいなと思っています。
「ワークショップ入門」の講義風景 まささんは学生9名のインタビューに丁寧に答えてくれた
インタビューを終えて
まささんのお話は、「人生の選択」について深く考えさせられるお話でした。私は大学入学後、学生団体で活動をしてきました。その経験から、自分のやりたいことがより実現する団体を立ち上げたいと思うようになりました。しかし、それを思い立ったのは大学1年の冬。2年生は忙しいと先輩から聞いていた私は、自分のキャパシティを超えてしまうのではないかと、団体立ち上げを断念しました。「やってもやらなくても自分の選択がベスト」というまささんの言葉は、そんな私の心に刺さりました。団体立ち上げを断念した私は、大学生である以上、学業を疎かにするべきではないから決断は間違っていないと自分に言い聞かせると同時に、「団体を立ち上げたい」という自分の気持ちに嘘をついてしまった、挑戦する前から諦めてしまったという思いが心に残っていました。しかし、このまささんの言葉を受け、自分の選択は私にとってベストであったと思うことができました。今後の人生で、様々な選択を迫られると思います。そんな時は「やってもやらなくても自分の選択がベスト」というまささんの言葉を思い出して、自分にとってのベストな選択をしようと思います。
せかいのまんなか 浦林真大さん
https://www.instagram.com/sekai_no_mannaka/
塚本 莉奈 / Rina Tsukamoto
鳥取県米子市出身。鳥取大学地域学部地域創造コース2022年度入学。学生団体「ばばのばプロジェクト」に所属し、駄菓子を媒介に活動。”人と人との繋がり””出会い”を大切にしている。将来は地元鳥取県での就職を検討中。積極的に挑戦すること、人生を楽しむことがモットー。
*この記事は、鳥取大学地域学部地域創造コース2年次選択科目「ワークショップ入門」(菰田レエ也先生, 2023年度)でのインタビューを基にしています。