2025.10.15

「子ども食堂に取り組む学生の会ユリイカ」の活動で得たものとは?

栗野さなみ
「子ども食堂に取り組む学生の会ユリイカ」の活動で得たものとは?

FEATURE特集

地域に開かれた「こども食堂」で活動する鳥取大学の学生団体「子ども食堂に取り組む学生の会ユリイカ」。地域の人々とつながり、会話し、食をともにする中で見えてきた、“学生だからこそできる地域との関わり方”を、メンバーである栗野さなみさんが、紹介します。

私は鳥取大学に入学したころから地域食堂のお手伝いをする学生団体に所属している。その団体の名前は「子ども食堂に取り組む学生の会ユリイカ」(以下ユリイカ)。
私はユリイカでの活動を通し、多様な経験を重ねることが出来た。鳥取県外出身の私が鳥取の人たちとつながることができたのはユリイカでの活動を通して複数の食堂へ行き、たくさんの人と出会うことができたからだ。
本稿では、地域食堂での活動を通して感じたことを紹介したいと思う。

 

ユリイカとはどんな学生団体?

私が所属しているユリイカがどんな団体なのかを簡単に紹介したい。
ユリイカは鳥取市内にある地域食堂でお手伝いをする学生団体で、現在は、主に4か所の地域食堂にお伺いしている。「大人でも子どもでもない学生だからできること」をモットーに活動をしている。
そもそも私たちユリイカが活動拠点にしている地域食堂とは、地域で生活している人が繋がり合い、安心できる居場所として運営されており、子どもから高齢者の様々な年代の人が参加できることが特徴である。

 

地域食堂との出会いと参加のきっかけ

私がユリイカに加入した理由は偶然の巡り合わせである。最初から「地域食堂で活動したい!」「地域に貢献できる何かをしたい!」というような強い意志でユリイカへの加入を決めた訳ではなかった。ユリイカに出会ったのも、先輩からの紹介で、初めはこの団体のことも、地域食堂のことも全く知らなかった。
私は高校生の頃から地元でボランティアをよくしていた。この経験があったので、大学に進学する際にも大学の外でできる何かのボランティアに参加できたらいいなと思っていた。その何かを探そうと、初めは別の団体の見学に行くと、その団体の代表の方があなたには「ユリイカがあっているかも」と提案してくださった。これが私とユリイカの出会いである。

そこからの私の決断は早かった。ユリイカに所属している先輩と連絡を取り、地域食堂のひとつである「市役所すなばこども食堂」での活動の見学を行った。この参加を経てユリイカへの加入を即決したのは、この見学で、とても充実した時間が過ごせたからだ。

ここからは、ユリイカが関わっている4つの食堂を紹介したい。
私が初めて活動に参加した「市役所すなばこども食堂」は当時、まだコロナ対策が続いており、お弁当配布という形での開催だった。
楽しそうにしゃべり、食堂運営をお手伝いしながら、地域に自然に溶け込む先輩たちの姿が印象的だ。レトルト食品やちくわなどの食事を渡すだけという一瞬の間でも、積極的に地域の人と関わろうとする先輩たちをすごいと思い、また、私もそうなりたいと思った。
市役所すなばこども食堂では、2024年から会食形式の地域食堂が再スタートした。会食形式だと食堂での滞在時間も増えることもあり、以前よりも積極的に利用者の方と関わるようになった。最近は私にも顔見知りのご家庭も増えてきた。だんだん他愛のない話ができるようになり、利用者さんとの距離感が縮まってきて、お手伝いとして参加している私自身も充実した時間を過ごすことが出来ている。

次に参加した地域食堂は、河原の「ふれあい食堂」だった。この食堂は、会食形式で調理・配膳のお手伝いをする。小さい子から高齢者まで幅広い年代の人が利用していることが特徴である。
調理に加わったり、会場の設営を手伝ったりすることで、よりこの場の一員になれるようだ。ご飯を食べ終わった後には小学生の子たちと遊んだり、赤ちゃんとたわむれたりする。
地域の高齢者からは、子どもたちだけでなく「学生さんみたいな若い人がいてくれると、元気とパワーがもらえる」と声をかけられ、自分の存在が誰かの支えになっていると実感できて嬉しかった。ユリイカの活動に対して「楽しいから参加する」だったのが「やりがいを感じられるから参加したい」に変化した瞬間だった。

また、気高の「けたかくるりこども食堂」は、ひときわアットホームで温かい食堂だ。この食堂は、特に近隣の知り合いやそこからの紹介で広まっているということもあり、顔見知りの人たち同士が多く利用している。私が初めて参加した当初はお弁当の配布形式のみであったが、そのお弁当を渡すだけなのに利用者さんと食堂の方の立ち話が絶えない。

最後に参加したのは同じく気高の「にじいろ☆たまてばこ」。ここは食堂というよりもサードプレイスとして運営しているので、他の食堂とはまた違った良さがある。ここでのユリイカの活動は、利用者さんと一緒に遊んだり、お茶をしながらおしゃべりをすること。小さい子が一生懸命ブロックで遊んでいる様子や、工作をしている様子を見守っているだけでとても微笑ましかった。

 

ユリイカでの活動を通して私が得たもの

これまで私が経験したユリイカでの活動を紹介してきたが、地域に出て活動をしているといっても、私はそんなたいそうなことはしていないと思う。なぜなら、地域食堂という居場所を作っているのは、”そこで生活を営んでいる人々”だ。私たち学生はあくまでこの作られた居場所でお手伝いをしているだけだ。地域の人たちがいなかったら、そもそも私たちユリイカは活動することが出来ない。
ユリイカは地域の人たちのおかげで活動することが出来るから、本当にすごいのは地域の人たちで、私たちユリイカも地域の人に支えられていると思う。そのお返しに、私も自分の力を発揮するだけだ。

私は、ユリイカでの活動を通して大学へ通うだけでは経験ができないことを経験できていると思う。人と人との輪に入り、よそものの私も歓迎してもらえる。そんな地域食堂での活動は私にとって学生生活の中で特別な時間になっている。地域食堂は私にとっても大切な居場所だ。大学という枠の外に出るだけで、普段とは違った経験もでき、いつもとは違う自分も発見出来る。

私が地域に出て活動するのは意識が高いからではない。私が地域食堂に参加するのは、人と関わり、おいしいご飯が食べられることで普段生活していくうえでの活力を得られるからだ。

これからも、私は地域食堂での活動を全力で行っていきたい。

栗野さなみ / Sanami Kurino

兵庫県宝塚市出身。鳥取大学地域学部地域創造コース2023年度入学。美味しいご飯を食べることと色々な人とおしゃべりする事が好き。好きな食べ物は栗ごはんとメロンパン。

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