2023.7.17

鳥取で映画を広めてたのって、どんな人? 門村裕明さん インタビュー前編

わたし|ワンダー編集部
鳥取で映画を広めてたのって、どんな人? 門村裕明さん インタビュー前編

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1960年代以降、減少の一途を辿った鳥取の映画館。さまざまな映画を鳥取でも楽しむ機会のために発足した「鳥取シネマ倶楽部」の代表を、1987年から3年間務めた門村裕明さんへのインタビュー前編です。数多くの映画を観てきた門村さんに、文化芸術に関心のある鳥取大学地域学部生の集まり「にんげん研究会」の木原さんと杵島さんが「鳥取で出会った最も記憶に残る芸術」をテーマにお話を伺いました。

 

「砂の器」は鳥取シネマ倶楽部で初めて上映した作品

——鳥取で出会った最も記憶に残る芸術について、門村さんが思いつくものを一つ挙げていただけたらと…。

門村:芸術っていうと難しいけどさ、今、いろいろ、あるんでね。十年二十年前からですけど、地元をメインに活動されてる、アーティストのコンサートも行くようになったりしました。絵の展示会も、鳥取出身の人の展示会を見に行くようになった。地元を意識するというか。映画で言ったら、自主上映活動のきっかけになった「砂の器」っちゅう映画は、一番影響があったっていうか。印象にはあります。

——「砂の器」はどういった映画なんですか?

門村:松本清張の原作のミステリー小説を映画化した作品です。ハンセン病のお父さんと全国を放浪していた子どもが、世界的に有名な音楽の指揮者になって大成功する。とある事件を追っている刑事二人組が調べていくと、その人を突き止めていくみたいな恰好で。

——鳥取シネマ倶楽部[1]の第一回目の時に上映した作品ですよね。

門村:そうです。その時はまだ鳥取シネマ俱楽部という名前はなかったんですけど。それこそ「砂の器」には、鳥取コミュニティシネマの清水増夫[2]さんが、エキストラで参加されてる。

——えー!そうなんですね!

門村:島根の山の中が舞台になるシーンがあって。そこに捜査に行くのに、夜行列車かなんかでずっと行くんだけど、途中で鳥取駅で降りて弁当買うシーンでホームで映っとられるそうですけど。

——えぇー!!

門村:意識してまだ観たことはないから、映っとるんだかどうかは知らんけど。

——じゃあ、自主上映活動では「砂の器」が印象的な作品ってことですかね。

門村:そうですね。きっかけになったという点では、重要な映画ではある。自主上映とか見に行ったりとかする中で印象的な映画はたくさんあったんですけどね。何って言われるとさっとは出てこないかもしらんけど。

 

どっちかっていうと「夕凪の街 桜の国」が好き

——もっと多くの人に見てほしい映画はあったりしますか。

門村:佐々部清監督の「夕凪の街 桜の国」という、原爆を題材にした映画がありまして。その、佐々部監督が毎年出る古湯映画祭[3]での上映に、監督も来られて会ったことがあったのでそこで初めて見ました。その上映に合わせて、映画を見る前にこうの史代さんの原作も読んだけど、すごい面白かったというか、衝撃的だったんで。映画も面白かったし。そのあと、同じ原作者の「この世界の片隅に」が凄くヒットして、有名になられましたけど、自分はどっちかっていうと「夕凪の街 桜の国」が好きなんです。

——全国で上映されたんですか。

門村:ええ。すごく数多くでは多分なかったと思うんですけど。大手の配給じゃなくて、こっちには来なかったんで。大阪まで見に行ったという恰好でしたかね。

——その映画を多くの人に見てもらいたいと。

門村:そうですね。パッと思いついたのはそれですかね。

——ありがとうございます。では門村さんについてのご質問なんですけど、趣味や特技はありますか。

門村:それこそ趣味はずっと映画鑑賞だったんだけど、最近は、あの…謎解きが好きです。

——えー!

門村:書籍の謎解きをしたり、公演やイベントに参加しに行ったりしています。

——鳥取でも謎解きのイベントとかあるんですか。

門村:ええ!今だったら、八頭町で、何か所も場所を回って謎を解くという、神戸の謎解きの会社が企画したイベントをやってますね。あとは宝探しみたいなのを大山の方でやってます。けっこう、最近は色々と行きますよ。鳥取の中でもね。

(後編へ続く)

脚注
[1]鳥取シネマ倶楽部…1987年から1990年まで、鳥取市内で自主上映活動を行っていたコミュニティ。2回目の上映から、「鳥取シネマ倶楽部」が正式に発足し、門村さんが代表を務めた。

[2]清水増夫…1970年に「アートシネマ鳥取グループ」を立ち上げて以来、鳥取における自主上映活動に携わる。現在、鳥取コミュニティシネマの代表。

[3]古湯映画祭…毎年9月中旬頃に佐賀県富士町の小さな温泉街で開催される映画祭。懐かしい名作から話題の最新作まで3日間にわたって一挙上映する。九州を代表する映画祭のひとつ。


 

門村裕明 / Hiroaki Kadomura
1964年鳥取県若桜町生まれ。県外の大学へ進学後、鳥取に戻って家業の製造業を継ぐ。1987年から1990年まで鳥取市内で自主上映活動を行い、鳥取シネマ倶楽部の代表を務めた。2023年3月末に解散することとなった鳥取コミュニティシネマ(代表:清水増夫さん)の上映当日のスタッフとして設営の手伝いも行う。一番熱心に行ったのは映画だが、コンサートや演劇にも足を運ぶ。

杵島和泉 / Izumi Kishima
2001年佐賀県生まれ。2020年4月鳥取大学地域学部国際地域文化コース入学。鳥取県の映画館で発行された映画館プログラムや地方新聞記事等のノンフィルム資料に注目した調査研究を行っている。アーカイブやフィルム上映にも関心を持ち、地域資料の整理や映写補助の活動にも取り組む。2023年8月1日から8月30日まで、「見る場所を見る2+——イラストで見る米子の映画館と鉄道の歴史」と題した展覧会を米子市立図書館で開催。

木原未稀 / Miki Kihara
2001年鳥取県生まれ。2020年4月鳥取大学地域学部国際地域文化コース入学。ドキュメンタリー映画の作品研究と制作活動を行っている。2023年ドキュメンタリー映画「Claraさんのはりこ」(2023)を制作し、「見る場所を見る2——アーティストによる鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」の関連企画として展示上映。

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