2024.1.7

混じりけのない100%の楽しさ 小説家・諏訪原 天祐さん インタビュー後編

わたし|ワンダー編集部
混じりけのない100%の楽しさ 小説家・諏訪原 天祐さん インタビュー後編

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鳥取大学文芸部のOBである、諏訪原天佑さんへのインタビュー後編です。話はいよいよ本題へ。現在、福祉施設で働きながら小説を書く諏訪原さんは、創作活動についてどのような考えを持っているのでしょうか。前編に引き続き、文化芸術に関心のある「にんげん研究会」の三弦さん、Kさん、Mさんがお話をお伺いしました。

 

鳥取で出会った最も印象に残る芸術について

——では、本題に入らせていただきます!鳥取で出会った最も印象に残る芸術について教えてください。

諏訪原:はい。普段僕は、障害のある子供に携わる仕事をしているのですが、その子たちが作るものに芸術性を感じます。芸術というのは、1人でも心を動かされたら、それはその人にとっての芸術である、と考えているからです。そういった意味で、自分の中では、子供達のつくるものは芸術と言えます。絵について「これは何を描いたの?」と聞くと、「お母さんを描いたの!」と答えてくれる。それだけで、私にとっては心揺さぶられる芸術だと思います。また、それを描いてるときの、彼ら彼女らの表情は、本当に楽しそうなんです。それこそ、さっきまで「宿題イヤ」と言って暴れていたような子が、いざ絵を描き始めると、すごく楽しそう。その子の表情、あり方に僕は心揺さぶられるのがある。だから僕は、楽しく作ることが、創作活動に必要な一個の要素なのかなって思います。

「楽しい」から生まれる創作

——先ほどのお話から、「楽しい」は創作活動において、重要な要素であるとわかりました。ご自身の創作活動では、どのような面が楽しいですか?

諏訪原:そうですね。自分はもちろん小説を書いてる時が一番楽しいですね。発表できないような、ひどい作品も多いのですが、それでも、パソコンに向かって文字を打ち込んでいる時が楽しいです。鳥取には創作活動をしている人がたくさんいます。文字だけじゃなく、絵を描いている人や、粘土を使う人もいますが、みんな作る時が楽しいから続けているのだと思います。今年の7月末に「鳥取アートフリマ」という一次創作の即売会がありました。そこには約30サークルが集まります。そこでは金銭のやりとりが発生しますが、別に売って儲けたいからやっているのではなくて、「やってて楽しい」が根本にあるんですよね。ただし、「楽しい」だけではだんだんできなくなってくるのも確かです。それこそプロの作家さんは、「楽しい」よりも、作品がどう受け手に捉えられるかを考えざるを得なくなってくる。だからこそ僕は、混じりけの一切ない「楽しい」を100%で、ものを作る子供に惹かれます。そこに障害のあるなしは一切関係ないですし、そういうものに僕は改めて影響を受けました。もともと楽しいからやる、という考えではありましたが、それに胸をはれるようになりました。やはり純粋な気持ちで、楽しく創作活動するという当たり前の大切さを、彼らの表情から受け取りましたね。

——ありがとうございます。私も創作をしているものとして胸に刻ませていただきました。

諏訪原:ただ、気をつけて欲しいのは、これはあくまで個人の考え方であるということです。影響を受けるかどうかはご自身で選択していただけたらと思います。補足として言うと、前に僕が聞いたことあるのは、楽しいだけじゃ創作は続かないっていう意見があります。例えば嫌いなヤツを小説の中だけでもぼこぼこにしてやるぞっていう復讐心で書いたりとかしてる人もいるし、二次創作をしている人は、楽しさ以外にも、キャラへの愛情が作るモチベーションに深く関わったりする。僕が中学生の時から好きな同人作家さんは、もう10年近く同じキャラを描き続けてます。僕は「楽しい100%」で創作をしたいと思っていますが、「楽しい70、復讐心30」とか、「楽しい50%、キャラへの愛情50%」とかそういうのも否定できないなって思います。でもあくまで自分は、楽しいがゼロ、なくなってしまったら創作は死んでしまうのかなって思う。たとえ、それが社会的に評価される作品であったとしても、自分はいい作品だとは思えない気がしますね。

 


 

諏訪原天祐 / Tenyu Suwahara

鳥取大学地域学部地域学科地域創造コース卒。鳥取大学文芸部OB。 障害児の通所支援施設に勤務する傍ら小説を執筆し、個人サークルで発表を行っている。鳥取アートフリマの他、県外の即売会への参加経験も多数。

三弦るけい / Rukei Sangen

2001年生まれ。岡山県岡山市出身。2020年、鳥取大学地域学部地域学科地域創造コース入学。鳥取大学文芸部部員。趣味で小説を執筆しており、2023年10月、初めて製本化した自作の短編小説集を鳥取アートフリマで頒布した。

K

2001年生まれ。岡山県玉野市出身。2020年、鳥取大学地域学部地域学科地域創造コース入学。趣味は絵を描くこと。特に固定の名義は持っていないので、友人との交流用SNSアカウントにたまに投稿している。最近のマイブームは回転寿司のテイクアウトをすること。

M

2001年生まれ。兵庫県姫路市出身。2020年、鳥取大学地域学部地域学科地域創造コース入学。趣味は、東南アジアの文化に触れること。特にタイのドラマと音楽にハマっている。また研究の一環兼趣味として、地域の日本語教室でボランティア活動を行っている。

 

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