2024.6.20

みふくやってどんな場所? 〜「WONDER MARKET @みふくや」レポート

彩戸えりか 
みふくやってどんな場所? 〜「WONDER MARKET @みふくや」レポート

LOCAL WONDERわたしの地域に
ワンダーあらわる

2024年4月13日に開催した「WONDER MARKET @みふくや」は、「わたし|ワンダーWONDER」オープニングイベントの第3弾です。会場の「みふくや」も、この春、新たにのれんを掲げたばかり。多くの人で賑わった蚤の市での出来事を、みふくやを運営する村田淑恵さん、大山文美さんの思いと共にお届けします。

 

それぞれのワンダーを持ち寄って交流する蚤の市
かつての旅館が並ぶ鳥取市瓦町の一角に、みふくやはある。「WONDER MARKET」は、このみふくやを会場に行われた、一日限りの蚤の市だ。6組の出店者はそれぞれが面白いと思うもの(ワンダー)を持ち寄った。

入り口近くに洋服や古道具を並べる「mikset」から聞こえる「どうぞ」という温かい声かけが、歴史のある建物の敷居をまたぐハードルを一気に下げてくれる。

1階と2階の和室に広げられていたのは、「チューニングの合っていない真っ赤なギター」「家具屋さんが自作した、木が呼吸しているようなハンガー」「知り合いのおばあちゃんが元気なころに作っていた袋」「趣のある曲がり方をした木の枝」「10代から今までに描いてきた絵のポストカード」「使い方はわからないけれど、置いておくだけで絵になるイギリス製のコーヒーミル」「古書」「古着」「古道具」…

たとえば「趣のある木の枝」の一本は、綺麗に木の皮が剥がれており、演劇で使ういい曲がりの枝を探していたという男性の元に収まっていった。

出店している「ゴ自愛商店」「エトピリカ」「好枝」「カルン」「SHEEPSHEEP BOOKS」「pieni」の前でいつもは出会うことのない人たちが、道具を眺めながら、大人も子ども何気ない会話を交わす。

「以前、若い人から譲ってもらったコーヒーミル。たぶん豆を挽けると思う」
「ここから粉が出てくるのかな?」
「こっちからじゃないかな?」

コーヒーミルはいまここでしか出会えないもの、使えるか使えないかもわからない、不確かさのあるもの。もろくゆるやかな人や古道具とのつながりが不思議な気持ちを呼び起こす。

蚤の市で私が選んだのは一枚のポストカードだった。森の緑には七つの色が紛れ込み、中央にギターを持つ人が描かれている。私はそれを、遠くに住む詩人へ送ることにした。彼女にとって温かな知らせとなることを願いながら。

2階には洗い場を備えた作業スペースもあり、ワークショップが2つ開かれていた。

一つは「喫茶ミラクル×鳥取県立美術館アートの種まきプロジェクト」。美術館オープンパレードのロゴをTシャツにシルクスクリーンでプリントする。終了間際まで制作する人が続き、2025年3月に開館を控える美術館への期待が高まっていることがわかる。

もう一つのワークショップは、「なんだこれ?!サークルとっとり」によるハンドブックの表紙作り。サークルのマネージャーをしている水田 美世さんと話しながら、表紙を切り抜く、扉にも穴をデザインするなど、こだわりの一冊を作りあげていた。

出店者の用意したワンダーが、訪れた人に届き、さらなる驚きや感動、喜びにつながる。みふくやに集う人たちの笑顔がそれを証明しているようだった。

三つの福「みふくや」にこめた願い

みふくやには、入り口を入ってすぐ右側に土間とキッチンがある。建物の横からも靴のまま気軽に出入りできるこのスペースで駄菓子とコーヒーを販売するのは、みふくやの運営を行う村田淑恵さん、大山文美さん。二人にみふくやへと込める思いを聞いた。

みふくやは、鳥取大火の後に建てられた建物で、当初は遊郭、その後旅館として使われた歴史を持つ。もともとは、「三福屋」と書き、三つの間口があったことから、この名前が付いたという。

築70年ほどの建物を守るため村田夫妻が買い取り、改修。村田さんの夫も「人に夢を伝える場所に」という強い思いを持ち、共に進んでいるとのこと。

村田さんと大山さんは、子どもの通う幼稚園で出会ったのをきっかけに、「建物を活かし地域のために開かれた場所にしたい」という未来を構想し、実現に向けて動き始めた。「一人だと勇気が足りないけれど、二人だと3倍の力が出る」と、とんとん拍子で計画を進めている。

村田さん:まずは私たちが居心地のいい場所にしたいと思ったのが出発点。町のために開かれた場所を作って、出会いの場所にしたいねと話し合っています。楽しみながら夢に挑戦できているので、充実しています。子どもたちを喜ばせたいですし、寄り道のできる場所にしたいですね。

大山さん:鳥取は住み心地がよくて、豊かに暮らせる場所。鳥取の面白さや良さを感じてほしいですね。いろいろな人が使うことで、場が生かされると感じています。みんながやりたいことを聞きながら、その時やりたいものを確定し、向き合っていきたいと思います。

この日は、「とっとりおさけプロジェクト・いでちゃん」とコラボレーションし、土間は大人たちが日本酒の飲み比べをできる場所に。テーブルに人が途切れることはなく、はずむ声が行き交っていた。

何よりも印象的だったのは、村田さんと大山さんの楽しそうに取り組む姿勢。二人は自分たちの活動を「大人のおままごと」と表現する。しかしそこにあるのは楽しさや面白さだけではない。地域のためを思う、成熟した大人の優しく温かい眼差しが、みふくやを包んでいると感じた。

みふくやから伸びる未来への道

みふくやの玄関先に立ち蚤の市を見守っているのは、今回の企画のマネージメントを担う「わたし|ワンダーWONDER」編集部の野口 明生さん。みふくやとそこに集まる人たちをつなぎ、新たな出会いを作り上げる起点となっている。

会場に設置された黒いラジオから流れるのは、蛇谷 りえさん、鳥取大学のもえちゃん、やまちゃんがこの日のために「WONDER WORKSHOP」で制作したラジオ番組「JMYパブラジオ」。もえちゃん、やまちゃんは、蚤の市に学生スタッフとして参加している。「いろいろな人と出会えるのが楽しい」と話し、目を輝かせて自身の世界を広げていく2人の姿が深く印象に残った。

そして大人たちと会話を楽しみながら、蚤の市を手伝う子どもたちの姿も。入り口の杉玉を見つめていると、小学校6年生のAさんが「これは、いらっしゃいませという意味だよ」と教えてくれた。いずれは、ここで駄菓子とビーズのお店を開いてみたいそうだ。

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みふくや改修の過程について、もっと詳しく知りたいときは、「鳥取駅前に新しいスペースをつくってる先生がいるって本当?」を読んでみてください。

 

 

彩戸えりか / AYATO Erika
ウェブマガジン『+〇++〇(トット)』ライター。詩誌「ぶーさーしっ」「言葉をさがす旅 Sail」に参加しています。

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