2023.4.1

「鳥取アートフリマ」って知ってる? 品岡トトリ インタビュー前編

わたし|ワンダー編集部
「鳥取アートフリマ」って知ってる? 品岡トトリ インタビュー前編

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創作物の即売会「鳥取アートフリマ」を運営するイラストレーター・品岡トトリさんへのインタビュー前編。「鳥取アートフリマ」をはじめたきっかけや、鳥取のアートシーンでの経験が語られます。
鳥取大学地域学部の卒業生である品岡さんに、文化芸術に関心のある同学部生の集まり「にんげん研究会」の梶川真奈さんと芹澤みなみさんがお話を聞きました。

 

鳥取って想起できるような名前にしたくて

芹澤:まず品岡さんが、アートに関心を持つきっかけなどあればお聞かせください。

品岡:はい。えーと、島根県松江市の同人誌即売会「花鳥風月」[1]に参加したことがアート活動に携わるきっかけでした。高校生のときお客さんとして参加してみて、「あ、面白そうだな」って思って今度はクリエイターとして参加しました。そこで現在「鳥取アートフリマ」[2]を一緒に運営している織作雨(おりさくあめ)さんと出会いました。

芹澤:鳥取大学には、元々アート系の勉強をするために入学されたんでしょうか。

品岡:あ、そうですね。地元の民話や言い伝えがすごく好きで、それをアニメーション化できたらなと思い、鳥取県の勉強も、映像の勉強もできる[3]鳥取大学に入りました。

芹澤:本当に鳥取がお好きだと。

品岡:そうですね。作家名もそのおかげで改名したというか。鳥取神(トトリノカミ)っていう、鳥取の神様から。鳥取って想起できるような名前にしたくて。

芹澤:卒業制作のポスター作品とか、第3回鳥取アートフリマのときのステッカーなんかも、鳥取の名物がモチーフで。

品岡:そうですね。今は仕事が忙しくてなかなか手を付けられてないですが…。

やっぱり仲間がいるって楽しい

芹澤:それでは鳥取アートフリマについてお聞きします。やはり、鳥取で花鳥風月みたいなことをやりたかったっていうのが第一にあるんでしょうか?

品岡:もうおっしゃる通りです。花鳥風月で織作雨さんと出会って、「深夜の美術展 in 鳥取」[4]の運営の皆さんからも影響を受けて、鳥取でも花鳥風月さんみたいなイベントができたらなあと思って。鳥取県がマンガ王国としてPRしてるんで、それなら花鳥風月さんみたいなサブカルチャーイベントがあってもいいなあ、という感じで立ち上げました。

芹澤:鳥取のアートシーンに対する見方が変わったりとか、鳥取アートフリマによってこんな影響を与えられたな、という体験はあるんでしょうか。

品岡:大それたことは言えないんですけど。今回の第4回まで回数を重ねたことで、今まで知らなかった山陰の作家さんが意外といっぱいいるんだなってことに気づけましたね。「あ、この人鳥取県出身なの?!」みたいな感じで、今まで見えなかった、近場で活動してる方々に出会えたのが、なかなか嬉しい収穫だなって思ってます。

芹澤:なるほど。山陰のサブカルチャー系の作家さんが一堂に会する機会っていうのは、少なかったんでしょうか。

品岡:そうですね。

芹澤:鳥取でサブカルチャー系のイベントが増え始めたのは、比較的最近なんですか?

品岡:そうですね。例えばカラフルキャンバス[5]さんの主催の方は、前に鳥取アートフリマに参加してくださった方で。ちょっとでも、鳥取の同人文化が動き出した、それの先駆けに、手助けになれているのであればめちゃくちゃ嬉しいですね。

芹澤:なるほど。繋がることの心強さっていうのはありますよね。

品岡:「同人」(同じ趣味の仲間)って言葉に含められてますよね。やっぱり仲間がいるって楽しいですから。

鳥取で出会えてよかったなって思った人

品岡:あ、そうだ。朝倉弘平[6]さんっていう、大山町にお住まいの作家さんがいらっしゃって。この人の作品に出会ったときは結構衝撃でした。

梶川:めっちゃ綺麗ですね。

品岡:そう、すごい綺麗。大学時代、とある授業で大山町にお邪魔した際に、町のいろんな特色をイラストにしたカードがお土産コーナーにめっちゃ並んでるのを見つけたんですよね。それが朝倉さんの絵でした。鳥取県の作品を制作したくて入学した私にとっては「こういう表現もあるんだ」ってびっくりしました。鳥取県の特色をどう捉えるか、それを見えてるまま描くのか、自分の中で表現を変えて描くのか。それの勉強というか、参考になった方ですね。

梶川:品岡さんが思う、朝倉さんの作品の特徴や魅力はどこですか?

品岡:まず、もう誰が見ても綺麗っていうのと、あと、線。朝倉さんの描く線は本当に迷いがないというか。そんなに立体的な描き方をしているわけじゃないけど、線と色だけで奥行きがあるように見せてるのが。自分が見えてる世界よりも鮮やかに見える?みたいな。この人にはこう見えてるんだっていうのを、視覚で共有するのがめちゃくちゃ上手い。

それに、絵を描いてるときに楽しそうというか。鳥取大学医学部附属病院の手術室の壁に、朝倉さんが絵を描くっていう企画があって。それのお手伝いをさせてもらったときに、1人で黙々と描くんじゃなくて、おしゃべりしながら描いたり、看護師さんに「ここ一緒に描きませんか」って声をかけたり。一緒に作品を作ることを楽しんでいる方だなって感じましたね。自分は結構1人で制作してたんで、「ああ、そういうのもありなんだな」って、勉強になった人です。


画像右端が朝倉弘平さん

梶川:確かに、作品を作る上で、人のペースに任せるのは結構難しいことですよね。

品岡:そうですね。「ちょっと時間足りないけど、手伝ってもらうと違うことになるしな」じゃなくて、一緒に作るっていうのがいいなって。

芹澤:共同作業で起きた化学反応を、楽しんだり許容したりするのって、すごくエネルギーがいることですよね。受け止める力が求められるというか。

品岡:おっしゃる通り。だからこそ、凝り固まった作品への姿勢っていうのを、朝倉さんの作品や制作過程がほぐしてくれたなぁと。鳥取で出会えてよかったなって思った人の1人ですね。

後編へ続く

脚注
[1] 花鳥風月…1995年から島根県松江市にて年6回(例年)開催されている、オールジャンル同人誌即売会。2022年11月27日、第162回を開催した。
[2] 鳥取アートフリマ…2019年から鳥取県鳥取市にて行われている創作物即売会。2022年7月31日、第4回を開催した。
[3] 品岡さんは在学中、鳥取大学地域学部の佐々木友輔ゼミに所属した。佐々木友輔さんは現役の映像作家でもある。
[4] 深夜の美術展…「都会の喧騒の中でひっそりと、深夜にだけ開催される美術展です。」というキャッチコピーのもと、都内で行われている美術展。出張版として、井澤大介氏の主催のもと鳥取市内でも行われている。「深夜の美術展in鳥取」は、2022年6月17日に鳥取県鳥取市Camel0857にて第9回が行われた。
[5] カラフルキャンバス…2022年10月9日に鳥取県鳥取市にて初開催されたオールジャンル同人誌即売会。
[6] 朝倉弘平…イラストレーター。宮城県仙台市生まれ。2007年より絵画制作活動を始め、多分野のアートワークを手掛ける。現在は鳥取県大山町を拠点に活動している。

 

品岡トトリ / Totori Shinaoka
鳥取県出身。鳥取大学地域学部地域学科国際地域文化コース卒。鳥取アートフリマ共同主催。米子市のアニメ制作会社に勤務しながら、個人でもイラストレーターとして活動中。「騒々しいぞ、コミュニティ」メンバー。

芹澤みなみ / Minami Serizawa
2001年生まれ。静岡県沼津市出身。2020年、鳥取大学地域学部地域学科国際地域文化コース入学。研究の一環兼趣味で、「亜海とま」名義で絵を描いている。最近の趣味はポケモンとスプラトゥーンとTRPG。

梶川真奈 / Mana Kajikawa
2001年生まれ。鳥取県鳥取市出身。地域学部地域学科国際地域文化コース令和2年度入学。
ゼミではオリジナル曲とMVを制作している。また、趣味で演劇の脚本執筆やK-POPの和訳動画を作る他、ゼミ内外でのK-POP布教も行っている。音楽と空想、演技、創作をこよなく愛すINFP。

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